指名手配犯と遭遇?!の巻
珍しく電車に乗る用事があったので、
「たまにはのんびりと、、、」と思い
駅弁を買ってひとり鈍行電車に乗り込みました。
車内はなぜか、若い夫婦ばっかりで、
初老の私がひとりで乗ってくるのがいかにも珍しかったのか
そろいもそろってサバのような目で、私のことをジロジロと眺めてきました。
よりにもよってサバ寿司を駅弁に選んだ事を激しく後悔しつつ、
一番風通しのよい窓際の席を選んで、ゆっくりと腰をおろしました。
ぶー。
何年前の仕業ですか。ぶーぶークッションて。
とっさに出掛けに見た小杉風のつっこみを真似てみましたが、
まわりの若夫婦は老女が恥ずかしかろうがどこ吹く風。
居心地の悪さを感じながら、そのもうひとつ隣の席へと移動しました。
「切符を拝見しま~す!」
あら。
私は慌てて柴田理恵並のメガネをかけなおし、
颯爽と入ってきた駅員の顔をまじまじと見つめました。
-「似ている・・・」
その駅員の顔にどうも見覚えがある。
はて。嫁の婿の顔だったか。母親の旦那の顔だったか。
いや違う、もっと遠い・・・・。
-「あ、あれは・・・!!指名手配の吉田に似て蝶!!」
もうすぐ90になろうかという、さっきは初老と嘘ついたこの老人が
指名手配の犯人と出会うなんて。
私は、現在執筆中の自分史の最後に、もうひとつ目次が増えることが嬉しくて、
この出会いをこのままでは終わらせたくないと胸躍らせました。
上は200、下は120。
血圧がだいぶ高いけど、このまま死ぬわけにはいかない。
興奮する胸をなんとかおさえ、ひとまずサバ寿司をぱくりとほおばりました。
そこへ、あの駅員がやってまいりました。
「切符を見せていただいてよろしいでしょうか?」
私は少しでも時間を稼いで自分史の最後の章をできるだけ長く書けるように、
この、イワバ吉田-命名は私です-と、長めの接触を図る事にしたのです。
でも、もう限界でした。私は見てしまったのです。
その駅員の胸にちょこんとつけられた名札を。
捜査官であれば重要証拠としてチョークで白丸つけるべき名札を。
そう、そこには紛れもなく「吉田」と書いてあったのです。
そして、こともあろうにだいぶ老いぼれていた私は、「吉田」と頭で思うと同時に
「よ・し・だ」と口にしてしまったのです!!!
やばい!!!超やばい!!と思ったその時、
駅員が声を大にしてこう叫んだのです。
「ふるたです!!!!!!」
私は「古田」を「吉田」と読み間違っていたばかりか、
よくみると全く指名手配犯にも似ておらず、
おまけに乗る電車も間違えていたのです。
すべてはこのメガネのせいだと
サバの油でレンズをぐりぐりとしてやりましたわ。
秋晴れのいいお天気の一日でした。